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キャッチフレーズは、「さわやか系鑑定士&会計士」〜殆ど唯一の不動産鑑定士業務中心の不動産鑑定士兼公認会計士

会計・税の話

冨田は公認会計士・税理士でもあるため、弁護士等の他士業の方から、時々、会計や税務に関するごく基本的な相談や質問を受けます。そこで、会計に関するごく基本的な事項について、お役立ち的に簡単な情報を下記添えたいと思います。
なお、以下は冨田の私見ですので、冨田は一切の責任を負いません。
その情報の活用は御自身の責任においてお願いいたします


お問い合わせは電話03-6379-6555か、メールなら
コチラ
なお、新規の弁護士・司法書士・公認会計士・税理士・行政書士等の先生が案件をご依頼頂いた場合、冨田 建の著書『弁護士・公認会計士・税理士のための不動産の法令・評価の実務Q&A』を贈呈しております。本をご覧頂いて、より適切に不動産鑑定評価書の活用が可能になります!


@ そもそも会計は何のためにあるの?

すばり、その会計主体(企業の会計ならその企業。以下、このページでは「企業」としますが、例えば企業以外、地方自治体の会計ならその地方自治体を、宗教法人ならその宗教法人を示す点だけご記憶ください)をとりまく利害関係者の意思決定に資するためです。
例えば、銀行等の債権者ならその企業にお金を貸して大丈夫か、投資家ならその企業に投資して大丈夫かという事を判断するために、その企業の財務状態が把握できるものがあればとても有用です。
このため、その財務状態を一定の用件の下、開示する事が必要となり、これが会計の本質といえます。

ただ、会計は決して企業の外部利害関係者のみのものでなく、例えば経営者がこの事業を継続するかとりやめるかの判断をしたり、無駄なコストを把握し削減する等の判断材料としても有用です。

このように、会計は資料作成には負担が生じますが、企業の内外の利害関係者の意思決定に不可欠なものといえます。

A 公認会計士って、何をする人なの?

冨田は不動産鑑定士ですが、公認会計士・税理士でもあります。
ですが、公認会計士ってどういう仕事をする人か、よくわからない方が多いと思われますので、説明したいと思います。
公認会計士には、大きく分けて3つのジャンルの業務があります。

(1) 監査業務
上記@で、会計の重要性をご理解頂けたかと思いますが、では、もし仮に企業が大赤字等の都合の悪い状況だったら「企業の状態に関する情報を捻じ曲げて開示する」という危険性もあります。
これがいわゆる粉飾決算なのですが、ある程度の重要性のある企業であれば、その社会的悪影響は甚大です。
この時、「企業の作成した会計が妥当なものか」を「監査する」人がいれば、粉飾の危険性は著しく減少します。
その監査する人こそ、公認会計士なのです。

監査業務は、公認会計士の本来的な業務であり、独占業務となっています。
そして、その公認会計士5人以上が集まって結成された法人が監査法人です。
つまり、監査法人とは、公認会計士の集団である法人といえます。

なお、公認会計士になるためには、公認会計士試験〔昔の公認会計士二次試験に該当・・・冨田は平成13年10月二次試験合格〕合格後、監査法人等での一定の会計実務経験を経た後に、修了考査〔昔の公認会計士三次試験に該当・・・冨田は平成17年3月三次試験合格〕を経る必要があります。
ちなみに、実務経験がないと、そもそも修了考査が受験できないため、公認会計士にはなれません。
このため、公認会計士試験合格者は皆、まず、監査法人への就職を通常は考えます。
言いかえれば公認会計士は皆、監査法人等で一定の会計実務を経ているわけであり、皆、実務に精通した会計の専門家といえるでしょう。

(2) 各種財務のアドバイザリー業務
公認会計士は上記の通り、会計の専門家ですので、監査する以外でも、各種の会計に関する調査等の専門家としても活躍が期待できます。
例えば、「鑑定の局面」のページでも触れている民事再生での財産評定作成の局面で、不動産以外の財産の再査定には公認会計士の出番となるのが一般的です。
また、(不動産ではなく)株式の鑑定評価でも、財務の知識が深い公認会計士の出番となるでしょう。と、いいますか、肩書のない単なる人でも法的には株式の鑑定評価は可能でしょうが、信頼性が全然異なるため、通常は公認会計士による鑑定とするのが一般的であり、信頼性維持およびトラブル回避の観点からもそうするべきでしょう。
あるいは、複数の選択肢がある企業の意思決定に際して、どちらが有利かの判断に際しての財務調査等や判断に関する経営アドバイスが必要な場面でも、公認会計士の出番が考えられます。
その他、財務の専門家として、様々な財務の意見を記載した意見書を提示し、例えば裁判所に意見書を提出する事で財務・会計絡みでの裁判資料とする事が考えられます。

これ以外にも、様々な局面が考えられますが、このように、財務の専門家としての公認会計士による各種調査やアドバイザリー、あるいは意見書の作成に公認会計士の活躍局面が考えられます。

(3) 税務業務
公認会計士(と、弁護士)の資格保持者は無条件に税理士登録ができます。
公認会計士の場合、十分に会計知識がある上に、そもそも監査業務で税金等に関する監査もするために十分な税務業務を行う知識がある事もあって、独立事務所を構える公認会計士は税理士登録の上で税務業務を行っている事が多いです。

B 企業会計と税務会計の違いは?

税理士はその企業に関する適切な納税をできる申告書の作成を主たる業務とします。
法人税をはじめとする一部の税務も会計に基づき申告を行う(下記F参照)のですが、ただ、税理士の役割は「適切な納税」をする事であり、厳密に言えば利害関係者の判断に資する企業の状況を表すには重要であるが税務に関連しない部分(やや専門的になりますが例えば減損会計等は通常は考慮外ですし、キャッシュフロー計算書等は作成しません)は税務会計上はスルーされますし、それで問題はありません。
ただ、実は、会計には税務目的以外にも様々な判断指標がつまっています。
 
これは冨田の個人的意見なのですが、中小企業では税理士の先生が会計書類を作成し、これに基づき税務申告を行っているのが実態と思います。が、それで終わりにしてはもったいないと思います。なぜなら、税務以外にも色々役立つ情報が会計には詰まっているからです。
もし、これを読まれている中小企業の経営者の方がいらっしゃるとして、顧問税理士の先生に税務申告を依頼する以外、会計関連にノータッチという状況であれば、一度、顧問税理士の先生に自社の改善・発展に関する相談をされてはいかがと言う気がします。税理士の先生だって、税務を行う上で感じた企業の財務に思う事があったとしても相談されないと言いにくい面があるでしょうが、経営者の方から近寄れば有用な情報が得られる可能性がもしかしてあるかもしれません。ひいては自社の発展に役立つ可能性があるのですから、一度相談されてはと思います。 

C 貸借対照表って何?

企業会計で主な会計書類として、貸借対照表・損益計算書があります。
これについて説明したいと思います。
まずは貸借対照表から。

企業は、その成立後、何らかの資産を「その企業のもの」として保有しています。

例えば、下記の資産を所有しているとしましょう。
・ 現金500、受取手形100、商品200、貸付金200、不動産500

ここで、この資産のリストを開示すれば、利害関係者にとってとても便利といえるでしょう。
そこで、この資産を並べてみましょう。すると、当たり前ですが下記のようになります。

現金  500
受取手形 100
商品 200
有価証券 200
不動産 500
合計   1500


ところで、企業がこれらの資産を所有するに至るには、これらの資産を購入する資金の調達源泉がある筈です。
その資金の調達する源泉とは、下記が考えられます。
(ア) 誰かから借りた借入金等、いつかは誰かに返済しなければいけない負債
(イ) その企業に出資してくれたスポンサー(株式会社であれば株式)からの出資
(ウ) 出資を元手に稼いだ儲けのうち、企業の中に貯めてある儲けの留保

と、いう事は、上記の資産リストの合計額と、上記(ア)〜(ウ)の合計額は一致する筈です。
例えば、(ア)に属する支払手形が100、借入金400、(イ)に属する資本金が600、(ウ)に属する利益の剰余が400として上記の資産のリストの右側にこれらを並べて記載すると、下記のようになります。

現金  500 支払手形 100
受取手形 100 借入金 400
商品 200
貸付金 200 資本金 600
不動産 500 利益の剰余 400
合計   1500 1500


実は、これこそが貸借対照表なのです。
即ち、「左側にその企業の所有する資産のリスト」を並べ、「右側にそれらの資産調達のための資金調達源泉」を並べたものが貸借対照表といえるのです。
ちなみに、この左側を「借方」、右側を「貸方」といいます。
また、貸方のうち、(ア)は返済義務のある負担ですので「負債」といい、(イ)(ウ)は返済義務のない純粋な出資者の持分ですので「純資産」といいます。

付け加えると、冨田がある時、仲の良い弁護士の先生に言われた事なのですが、弁護士の先生から見ると「貸方」に借入金があって、「借方」に借入金があるのは逆な気がして違和感があるとの事です。
ですが、この点に関しては、「左側にスポンサーや債権者から借りて運用している資産」があり、「右側にスポンサーや債権者から貸してもらっている調達源泉がある」と覚えれば、混乱が解消するのではないかと思います。

貸借対照表は、税務上の理由から、国内ではどんな企業でも原則としても1年に1回以上は作成されます。

D 損益計算書って何?

企業は基本的に稼ぐために活動しています。なので、稼いだ額を明確にする事はとても重要です。
では、どうやって把握したらよいでしょうか。
 
今、仮に、C記載の貸借対照表の企業の1年前の貸借対照表の状態が下記の状態だったとしましょう。
(配当等はないものとする)

現金  600 支払手形 100
受取手形 0 借入金 400
商品 0
貸付金 0 資本金 600
不動産 500 利益の剰余 0
合計   1100 1100

この後1年間に企業に入ってくる企業活動の成果(収益)、収益獲得のために企業が払わなければいけない経済的負担(費用)として下記が発生したものとしましょう。
・売上1000…収益
・その他収益200(例えば、貸付金の利息や不動産賃貸業でない場合の家賃収入等が該当)・・・収益
・売上原価400
・交際費100・・・費用
・その他費用300・・・費用(人件費や支払利息等の諸々の費用。便宜上、ここでは税金も含むものとする)

そして、これらを100だけ受取手形で決済した以外はすべて現金で決済したとして、更に現金で商品200を購入し、200は貸付に回したものとします。その結果は、C記載の貸借対照表になります。

すると、企業の収益・費用は下記のようになり、右側に収益、左側に費用のリストを並べて収益−費用で求められる純粋な儲けである利益は両者の差の400となります。

売上原価 400 売上 1000
交際費 100 その他の収益 200
その他費用 300
利益 400

実は、このような収益・費用をまとめて、利益を算出したものが損益計算書(但し本物の損益計算書は多くの場合、このような右に収益、左に費用という報告形式はとっていません)なのです。

そして、この例からもわかる通り、損益計算書は2つの時点の貸借対照表における利益の剰余と連動します。

※実際には配当や資本組入等があるので、常に損益計算書の利益と貸借対照表上の利益の剰余の変動額とが一致するとは限らない

このように、損益計算書は、企業の収益と費用等(税金等も含む)を記載して企業の経営成績を利益として明らかする表といえます。



E 簿記の仕訳と貸借対照表・損益計算書との関係はどうなっているの?

これは誰かから聞かれた事ではなく、ある時、冨田が日商簿記2級の問題を見た時に思った事なのですが、日商簿記2級の問題は「簿記の仕訳」が記載されるでのすけれど、正直なところ、これだけだと仕訳と貸借対照表・損益計算書とと関係が分かりにくいのではないかと思います。
そこで、ここでは、簡単に説明したいと思います。

例えば、CDの例で、一つ一つの動きを記録しないと、貸借対照表や損益計算書などできません。
では、どうしたらよいのかという話になるのですが、ここで一つ、工夫を。

例えば、売上が1000発生して、現金で受け取った場合、売上が1000発生したという側面の他、現金を1000受け取ったという側面も生じています。
同様に、売上原価が400発生して現金で支払った場合、売上原価400が発生した側面の他、現金を400支払ったと言う側面も生じています。
と、言う事は、前者の場合、借方項目である現金が1000増えた代わりに売上も1000増えたという記録が出来、後者の場合は借方項目である現金が400減少したかわりに売上原価が400発生したという記録が出来ます。そうであれば、現金を基準にして、現金が増えた場合は借方の増加として、現金が減った場合は借方の減少としてこれらの取引を記録が出来る事となります。

そこで、同様にD記載の動きを記録を現金(借方項目)が増加した場合は左側に現金、右側にその相手方の内容を、逆に現金が減少した場合は右側に現金を左側にその相手方の内容を記録してみましょう。
※ 売上のうち100は受取手形で回収なのでこの100については現金は関与しないが、便宜上、ここではこの100部分も一旦現金で受領したと思ったもののそれが実は受取手形だった(つまり一旦現金100と売上100が生じたものの更にその後に現金100の減少と受取手形100の増加)ものと看做す。

すると、こんな感じになります。

(現 金)     1000   (売上)     1000
(現 金)       200   (その他の収益)  200
(売上原価)    400   (現金)      400
(交際費)     100   (現金)      100
(その他費用)   300   (現金)      300
(受取手形)    100   (現金)      100 
(貸付金)     200   (現金)      200 
(商品)      200   (現金)      200  

実は、D記載の貸借対照表からこれらの項目を足してあげる(右側にある借方項目〔現金〕の金額は借方項目〔現金〕のマイナスとしてカウントする)と、D記載の損益計算書とCの貸借対照表が出来るのです。
 
そして、実はこれこそが仕訳なのです。

このように、貸借対照表と損益計算書は、一つ一つの取引が簿記の仕訳の集計された結果として作成されると言う関係にあります。

F 法人税申告書ってどんなもの?

企業は、基本的に利益に応じて科される法人税等の税金があります。
では、企業は、損益計算書に記載される利益を課税所得(税額計算の前提となる税務上で扱う利益の事)として扱ってよいのでしょうか。
答えは、NOです。例えば、C〜E記載の企業の横に、他の要素は同じで費用が「売上原価400、交際費100、その他費用300で利益400」ではなく、「売上原価100、交際費700、その他費用0で利益400」の企業があったとしましょう。
交際費とは、いわば呑んだり食ったりする費用です。企業間でのお付き合いとしては大事なものですが、一方は呑んだり食べたりで交際費を沢山計上しているのに両者が利益額は同じ400、税金も同額と言われたら、C〜E記載の企業は納得いかないでしょう。

そこで、このような場合、税務当局は、利益に一定の調整を経て、課税所得を計算する事で税務行政上の不都合を除去し、課税の公平に十分に配慮した税制を運営しています。
いまここでは交際費をケースに挙げましたが、他にも多様なケースがある事はいうまでもありません。
そして、その「調整の内容」も示さないと、納税ができません。
実は、この調整の内容を示した上で法人税額を計算しているものこそ、法人税申告書なのです。
なお、税務上の収益は「益金」、費用は「損金」といいますが、調整が絡むため会計上の収益・費用と税務上の益金・損金とは一致するとは限りません。

法人税申告書では税引前当期利益に基づき、調整項目を加算もしくは減算し(別表-4というページで行う)、これに基づき得られた益金から損金を控除して得られる課税所得を別表-1というページに転記した上で、この別表-1で税額を計算します。(なお、実際にはその他、青色欠損金等の制度があり、これらを配慮する事があります)

G 借入と増資のメリット・デメリットって?

企業が活動するにはそもそも資金調達が必要ですが、それは上記Cで述べた通り、誰かから借りる方法と、スポンサーに出資してもらうという方法があります。

例えば、企業の全資産に対して同じ利益率の2つの企業があったとしましょう。
C社は全資産1億円、(年間)利益率5%なので年間利益は500万円、D社は全資産10億円とすると、当然、年間利益も5,000万円まで膨れ上がります。

もし、C社もまた、資金調達さえできればD社のようになれるとすれば、利益が4,500万円増加するのでとても魅力的です。

そこで、どうしても資金調達したい場合、2つの選択肢があります。
ひとつは銀行等からの借り入れ。が、これは利益率が減少した場合等は返済困難になって、会社そのものが倒産という可能性が出てくる上、銀行等の融資額にも当然、上限があります。

もう一つはスポンサーからの出資の増強です。こちらは、特定のスポンサーからだけの出資には限界があり都合良く調達できるとは限りませんが、出資を増強しても返済義務は増えないので、倒産等のリスクは基本的には無いです

全ての企業がそうというわけではないですが、規模を大きくしても利益率が変わらない、もしくは場合によっては多くなる業種の企業の場合、借入や出資で資金調達を行い、規模を大きくすれば利益額が多くなることが期待されるためここに借入や出資による資金調達の意義があるといえます。
一方で、借入の場合の倒産リスクや、出資の場合の配当の増額の必要性や、場合によっては多くの出資者が介入する事による意思不統一等のトラブル等の可能性も資金調達に際しては念頭に置くべきでしょう。

多くの企業が借入を行う背景には、このように資金調達により企業の利益獲得能力等の強化が背景にあるといえるであり、逆に言えば、無借金経営というのは安全性の点では申し分ないのですが、規模の利益によるより多くの利益獲得可能性をなくしている可能性があるという一面もあるといえるでしょう。
 

H 黒字倒産って?

一般の方は、黒字企業がなぜ倒産するのか不思議でしょうが、そのメカニズムについて説明したいと思います。

例えばCの貸借対照表の企業で、仮に現金が100少なく400、受取手形が100多くて200だった下記の状態として、受取手形の決済日と貸付金の回収予定日が3ヶ月後、支払手形と借入金の決済予定日が1ヶ月後、それ以外は特段の動きはないものとしましょう。

現金  400 支払手形 100
受取手形 200 借入金 400
商品 200
貸付金 200 資本金 600
不動産 500 利益の剰余 400
合計   1500 1500


この企業は1カ月後はどうなるでしょうか。
答えは、合計500ある支払手形や借入金等を返そうと思っても、手元に現金が400しかないためにどうしても返しきれなくなるというものです。
つまり、「利益は出ていても、その利益が十分に換金されていなかったり他の資産に化けたために手元の現金が不足し、そのために借入金等が払えなくなる等の」結果、企業は破綻、すなわち、黒字倒産するのです。
その結果、民事再生等に至る事も当然、あり得ます。
逆に言えば、利益がない損失計上の状態でも、現金さえあれば返済はできますからただちに破綻することはないのです。
但し、利益がない損失計上の状態が続くと、遠からず肝心の手元資金も不足するので念のため。

I 不動産の価値が下落したら純資産はどうなる・・・?

冨田は不動産鑑定士(・公認会計士)なので、不動産価値が下落した場合の会計に及ぼす影響についても触れておきましょう。

特に減損会計等を適用しない非上場の中小企業の場合、通常、不動産(ここでは土地・借地権とする。建物は建物勘定で別に計上され「減価償却」という手続きを行うためここでは便宜上ないものとする)は取得時の対価の金額で帳簿に記録されたまま評価のし直しをしていないケースが一般的と思われます。

ところが、実際には不動産の公正価値が不景気で下落していた場合、貸借対照表はどうなるでしょうか。
いま、C〜Eで記載した貸借対照表(下記)の企業の不動産が500→100(400の下落)になったとしましょう。
すると、借方に計上された不動産が下記の通り500→100に下落しますから、当然、借方合計も1500→1100と400の下落になります。と、なると、借方と貸方はC記載の理屈で常に一致しますので当然貸方も400下落しますが、貸方のうち、負債は債権者等が免除したわけではないので減少しませんから、企業の純粋な持ち分、即ち、純資産の部が減少する事となります。
この場合、企業が折角稼いだ400の利益の留保を、不動産の公正価値の下落という損失で食いつぶした事になります。
 
減損会計を適用する上場企業はこのような実態が開示されるのでともかくとして、冨田の経験則として減損会計を適用しない中小企業の多くは不動産価値の適切な認識が出来ていない結果として企業の実態が適切に把握できていない事が多い点、御記憶頂ければと思います。

現金  500 支払手形 100
受取手形 100 借入金 400
商品 200
貸付金 200 資本金 600
不動産 500→100 利益の剰余 400→0
合計   1500→1100 1500→1100


ちなみに上記の程度であれば、救いはありますが、もっとひどいのになると、こんな場合もあります。
下記のような貸借対照表の企業があったとして、不動産価格が900→100(800の下落)に下落したとしましょう。どうなるでしょうか。

現金  500 支払手形 300
受取手形 100 借入金 1000
商品 200
貸付金 200 資本金 300→▲200
不動産 900→100 利益の剰余 300→0
合計   1900→1100 1900→1100


ご覧の通り、不動産価値の下落額(800)が純資産の合計(資本金+利益の剰余=600)を上回っているために、利益の剰余が0になったばかりか資本金がマイナス、即ち、スポンサーからの折角の出資を無にしたばかりか、返済義務のある負債(支払手形+借入金=1300)を会社の全資産を処分したとしても支払いきれない状態となっています。
 このような純資産がマイナスの状態を債務超過といいます。

このような恐ろしい状態にもかかわらずこの価値の下落を反映しなかったら、純資産はまだ潤沢にあると勘違いして平然と出資者に対して配当を行ったり、債権者もまだ十分に純資産が十分にあると勘違いしてこの企業に貸付(そして、回収できないという悲しい結果が待っている)する等を通じて、利害関係者の判断を誤らした結果として被害を及ぼす事となります。
もっというとここまで下落する前に何らかの形で不動産価値を把握していたら、100まで下落する前に例えば700とか500程度の価値のある時に売却して、とりあえず債務超過だけは避けるという事も出来たかもしれません。



配当等は純資産の状況に応じて決定されますし、それ以外にも例えば債権者が純資産がどの程度あるか(=自分の債権の担保はどの程度あるか)を判断したり、出資者が経営者の進退・交代等を決定する場合の業績判断に際して指標としたり、あるいは場合によっては不動産の処分等の経営意思決定に役立てるためにも、このような実態を適切に把握・報告する事はとても重要な事です。会計の本質的な目的である企業の利害関係者の意思決定に資する意味でも、不動産の価値の適切な把握は重要な事といえるのです。


以上、ちょっとしたお役立ちリンクを書いてみましたが、御自身の責任においてご活用頂ければ幸いです。

また、下記も是非、ご一読頂ければと思います。

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